本を味わう

読むと忘れるので本の感想とか・・・

谷崎潤一郎

谷崎潤一郎「幇間」

幇間とはなんと悲しき者だろう。もしそれを生まれ持ってきたのであればこれこそ悲しき性と思わねばならない。 現代の道化は悲しい顔をメイクで隠し、ひょっとこの仮面を被れば誰でも笑いものになれる。 どこか麗らかな春をパステルカラーで描いたような風景…

谷崎潤一郎「少年」

一言で言うなら“切り取った新鮮な作品”とでも言うのだろうか。 その場の風景を切り取ってしまうのなら写真が一番手っ取り早いだろう。それを文章で書き連ねてしまった青臭くもとても刺激的な作品だ。 しかも、それはセルを何枚にも張り重ねした映画のように…

谷崎潤一郎「麒麟」

まだ自分は「論語」を熟読したことがない。 孔子は聞いたことがある。その程度の知識量ということを前提として読んでみるとひたすらに“孔子の憂い”を画いた作品である気がする。 鳳兮鳳兮、何徳之衰也、往者不可諌也、来者猶可追也、已而已而、今之従政者殆…

谷崎潤一郎「刺青」

其れはまだ人々が「愚」と云ふ貴い徳を持つて居て― ここでは「愚かさ」が何よりも尊い「徳」なのだ。時々賢い者をそうでないものとに分かれるが、それとは違う。 誰もがおべっかを使って緩い温い世間の中では美しい者は強者であり醜い者は弱者であつた。 そ…